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カーラジオと一般ラジオの違いREPORT 1

2012/12/11

カーラジオ(車載用 AM/FMチューナー)には特有なブロックがいくつかある

ほとんどの人は、ラジオ放送というと家の中よりも車の中で聞く方が多いのではないでしょうか。
 そのカーラジオ(カーオーディオやカーナビに付いているAM/FMチューナー)ですが、一般ラジオ(つまりラジカセやホームステレオのAM/FMチューナー)とはちょっと違う特有な構成になっています。
 一般ラジオについては、いろいろと書籍も出回っており、ネットでもかなり記述されていて、構成や原理など広く伝わっていますが、カーラジオについては、書籍でもネットでもあまり見当たりません。そこでカーラジオ特有の点についてまずはリストアップ程度に、また後日、ブロックごとに詳しく書いていきたいと思います。

 下図にカーラジオの概略ブロック図を示します。青色の部分がカーラジオ特有の部分です。


カーラジオのブロック図

1.まずはAMアンテナ入力部が違う

カーラジオのAMのアンテナ入力部は一般ラジオとは違っています。カーオーディオやカーナビは、金属シャーシ内に収められており、車の中に取り付けられるため、ラジカセやボータブルラジオで使われているバーアンテナや、ホームステレオで使われているループアンテナが構成できません。
 そのため、カーラジオのAM用のアンテナはFM用のアンテナと共用になっています。アンテナ入力部でバーアンテナやループアンテナのような同調回路が構成できないため、非同調の広帯域で、ハイインピーダンスのLNA(ローノイズアンプ)に入力される構成になっています。
 カーラジオのAMアンテナについては、カーラジオのAMアンテナ も参考にして下さい。

 なお、FMアンテナ入力部については、カーラジオも一般ラジオと同じで、75Ω入力で設計されています。

2.次に一番苦労するFMマルチパスノイズ抑圧回路

カーラジオと一般ラジオでの一番違う点はこのFMマルチパスノイズ抑圧用の部分です。車は当然ながら位置が変化する関係上、指向性のあるアンテナを使えません。そのためマルチパスの影響をまともに受けます。走行中は電波状況が変化するため、マルチパスノイズが発生することがよくあります。音声が歪むといったレベルではなく、ザッザッという耳障りなノイズが頻繁に発生します。カーラジオではこのマルチパスノイズを抑圧する回路が必要になり、いかにしてこのノイズを目立たなくするかが重要ポイントになります。
 実際にはノイズの程度に応じてハイカットしたり、セパレーションを下げたりしています。ただ、効かせすぎると音声の違和感が発生したり、音質が悪化します。ノイズ抑圧と音質との兼ね合いになり、この辺の設定はかなり微妙です。カーオーディオメーカーごとに、ノウハウがあり、設定が違っています。
 マルチパスノイズについては、カーラジオのマルチパスノイズとハイカット&セパレーションコントロール も参考にして下さい。

3.更にAM/FMイグニッションノイズ抑圧回路もある

 車からはイグニッションノイズが発生します。このノイズはパルス性のノイズで、FMの弱電界で特に目立ちます。また(FM程ではないにしても)AMでも発生します。よって、ノイズが発生している時のみの短い時間信号を遮断してパルス性ノイズ抑圧するのがイグニッションノイズ抑圧回路です。
 ワイパーや電動ミラー動作時のモーターから発生するノイズにも対応します。通常「ノイズキャンセラ」とか「ノイズブランカ」といっています。

4.誰もいない山奥の弱電界から送信アンテナ直下の強電界まで対応

感度はラジオ性能の中で重要な特性ですが、カーラジオは特に重要です。車で弱電界地域まで行くことも当然ありますので、そういう時に感度の悪いラジオでは聞こえなくなってしまいます。
 感度については、FMチューナーの感度について とAMチューナー(カーラジオ)の感度 も参考にして下さい。
 
 一方で逆に送信アンテナ近くの非常に強電界の地域でも対応しなくてはなりません。送信アンテナ近くで非常に強い妨害を受けながら、離れた場所からの弱い電波を受信するような対応もしなくてはなりません。感度と妨害特性が相反しますから弱電界から強電界までの対応は難しいわけです。よって、複雑なRFAGC回路も搭載しています。
 また、弱電界のノイズを減少させるための、電解レベルによって音量を下げるソフトミュート回路も付いています。

5.マルチパス対策に有効なアンテナダイバーシティーもある

マルチパスノイズ対策としてアンテナを2本(あるいはそれ以上)用意して状況の良い方のアンテナに切り替えるシステムです。アンテナだけでなくチューナー部まで2系統にする方法もあります。市販のカーステレオではアンテナを追加するのが面倒ななため、車メーカーの純正品でよく使われています。

6.過酷な使用温度範囲

車内での環境は過酷です。そのためカーラジオは−40℃〜85℃まで性能保証しなければなりません。一般ラジオの比べて厳しい温度対応が要求されます。

7.車メーカーからの厳しい品質要求

車メーカーは基本的に厳しい品質を要求してきます。カーラジオでも純正品の採用時は、従来品よりも劣る項目があると(実用上問題なくとも)基本的にNGとなってしまいます。たとえば、送信アンテナ直下でスピーカーに耳をつけて比較し、従来品に比べて僅かでも劣ると採用されません。実用上問題なければいいじゃないかという気もしますが、この厳しい品質要求のおかげでまだ国内にカーラジオの仕事が残っているとも言えます。