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カーラジオのマルチパスノイズと
「ハイカット&セパレーションコントロール」について

2013/4/26
     

 カーラジオ(カーナビやカーステレオ内のラジオ)のFMのマルチパスノイズと、その対策法のひとつであるハイカットコントロール、セパレーションコントロールについて書いてみたいと思います。

 マルチパスノイズ対策法としては、他に、
●ダイバーシティー
●適応フィルターを用いてIF段で反射波キャンセル
などがあります。

1.マルチパスノイズについて

 
 カーラジオでの一番の問題は、FMのマルチパスノイズです。私がカーラジオの仕事を始めた35年まえからずっと問題になっています。

 FM受信時、受信可能な電界強度で、特別な妨害波もないのに、「ザッ、ザッ」という耳触りのノイズが発生したら、それはマルチパスノイズです。

 マルチバスノイズは、強電界から弱電界まであらゆる電界レベルで発生します。また、周りの建物などの状況でノイズ発生の程度が変わります。マルチパスノイズが一番目立つのは街中の中電界地域です。逆に、目立たないのは、街中から遠く離れた周りになにもない高原などの地域です。

 
Fig.1マルチパス発生の概略図マルチパス発生の概略図
 Fig.1はよく目にするマルチパス発生の概略図です。

 送信アンテナからの直接波と、建物などで反射して時間が遅れた反射波とで、マルチパスの状況が発生します。

 FMの場合は、変調により周波数が変化するため、直接波と反射波の時間ずれが一定でも、周波数変化に応じて同相になったり逆相になったりします。その結果、レベル、位相が急激に変化する状況が発生し、耳触りなマルチパスノイズになります。

 従って、音声の無い時は、マルチパスの状況下でも電波の強弱が変化するだけでマルチパスノイズは発生しないはずです。ただ、実際のFM電波はステレオ放送のための19khzのパイロット信号が10%の変調度で常時変調されているため、音声の無い時でも、程度は軽いもののマルチパスノイズが発生しています。


2.マルチパスノイズの一番の原因は指向性アンテナが使えないこと


 以前、マルチパスノイズのテストコースで、車に指向性のあるアンテナを積み込んで走ったことがあります。

 このテストコースは、中電界の住宅街で、酷いマルチパスノイズを常時発生するようなテストコースです。通常のカーラジオの状態では、聞くに堪えない状況になります。

 ところが、アンテナを指向性のあるタイプに替えた途端、ノイズが全く無くなり、クリア―な音質に一変しました。あまりの違いに非常に驚いたのを覚えています。

 結局、カ―ラジオの場合は、車の位置や方向が変化するため指向性のアンテナを用いることができず、それがマルチパスノイズ発生の原因になっています。


3.ハイカット&セパレーションコントロール


 ハイカットコントロールとセパレーションコントロールは、カーラジオのマルチパスノイズ対策として最も一般的に用いられている機能です。すべてのカーラジオに搭載されています。

 マルチパスノイズの状況に応じて、ハイカットやセパレーションをリニアにコントロールしています。カーラジオの場合は電波状況が絶えず変化しますのでスイッチ的な切り替えでは、違和感を発生してしうため、リニアにコントロールすることが必要なわけです。
 
 @ハイカットコントロールについて

 マルチパスノイズは高域に多くのノイズを含んでいます。よって、ハイカットすることにより耳障りなノイズを軽減することができます。

 通常、フラットの(ハイカットなしの)信号ラインと、RC一次のLPF通過後の(ハイカットされた)信号ラインを設け、そのブレンド量を変化させてハイカットをリニアにコントロールしています。
 RC一次のLPFは、遮断周波数3Khz(10Khzで10dB落ち)位に設定しています。

 「補足」AMでも弱入力でハイカットコントロール機能を使っているカーラジオもあります。AMでのハイカットコントロールの目的は感度UPです。AMはもともと高域が落ちているため、AMのRC一次のLPFの遮断周波数は700hz位と低く設定しています。

 Aセパレーションコントロールについて

 ステレオ時は、23Khzから53KhzのSUB信号帯域のノイズも可聴帯域に変換されてしまうため、マルチパスノイズも大きくなります。よって、モノラルにすることでノイズを減らすことができます。SUB信号の復調レベルを減少させることでセパレーション量を小さくし、ステレオ⇔モノラルをリニアにコントロールしています。


4.なにでコントロールしているか


  コントロールする信号としては、@電界レベル、AIF信号のAM成分、B変調度
などがあります。

 @電界レベルでのコントロール

 マルチパスノイズ発生時は電界レベルも落ちるため、弱電界時にハイカットし、モノラルにしています。
 弱電界時はもともと(マルチパスの影響が無くても)ノイズが増えるため、マルチバスノイズが無い場合でも有効です。

 Fig.2に電界レベルによるハイカットコントロールの特性例を、また、Fig.3に電界レベルによるセパレーションコントロールの特性例を示します。

Fig.2 ハイカットコントロール特性例
 
 Fig.3 セパレーションコントロール特性例



 AIF信号のAM成分でのコントロール

 マルチパスノイズ発生時は、AM成分が発生します。変調成分により直接はと反射波の位相が同相になったり逆相になったりすためです。このAM成分が検出されたらハイカットし、モノラルにしています。通常は19Khz(パイロット信号)のAM成分を検出しています。

 B変調度でのコントロール

 一般的ではありませんが、一部のカーラジオで使われています。変調度が小さい時は、ハイカットし、モノラルにしています。
 S/N測定のノイズレベル測定時は変調offで測定しますので、この機能があるとS/Nの測定値が良くなります。



6.設定する上での注意


 ハイカット、セパレーションコントロールの動作ポイント動作スピードの設定は、各カーオーディオメーカーによって違います。また、市販品か純正品かでも違う場合があります。
 
 カーオーディオメーカーのエンジニアは、フィールドテストを繰り返して設定を行いますが、大事なことは音声の違和感を発生させない範囲で設定することです。違和感があると即、市場クレームにつながります。

 一般ユーザーは、ハイカットやセパレーションコントロールのことは頭にありませんから、音質が変わったりステレオ⇔モノラルの繰り返しなどの違和感があると、「このラジオはおかしい」と思うわけです。

 カーオーディオメーカーのエンジニアは、ノイズを減らすことを目標にしているため、フィールドテストを繰り返す程、ノイズの大小を気にして音声の違和感にたいして鈍感になっていきます。「一般ユーザーはノイズを聞こうとしているのでなく音声を聞こうとしているのだ」ということを常に頭に入れながら設定することが大事です。