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DSPチューナーとアナログチューナー比較HEADLINE


2013/5/13
  

DSPチューナー(DSPラジオ)とは


 DSPチューナーとは、従来のアナログのAM/FMラジオ放送を受信し、IF、あるいはRF信号をデジタル変換し、デジタルにて信号処理した後、再びアナログ信号に戻して出力するチューナーのことです。

 別に、デジタルラジオ放送用のチューナーというものもあり、こちらは、HDチューナー(HDラジオ)といっています。

 ここでは、カーナビやカーオーディオに搭載されているカーラジオ用のDSPチューナーについて説明します。

 下のFig.1にアナログチューナーの一般的なカーラジオブロック図を示します。




 DSPチューナーでは、上図のうちの赤四角で囲った部分をデジタル信号処理します。

 カーラジオ用のDSPチューナーの場合は、通常、RF信号をMIXでロ―IFに変換した後、IF信号をADCにてデジタル変換します。その後DSPにてデジタル信号処理し、最後にDACにてアナログに戻してLch,Rchを出力します。なお、出力はアナログに戻さずデジタルのまま出力する機能も備えています。

 つまり、DSPチューナーは下のFig.2のようなブロック図になります。


 
 DSPチューナー用のICには、
 アナログとPLL部分をBiCMOSプロセス、デジタル部分をCMOSプロセス用いた2チップ構成のICと、
 アナログ部分からデジタル部分すべてにCMOSプロセスを用いたフルCMOS1チップのICとがあります。
 また、2チップ構成でも、1つのICパッケージに2チップ収めた2in1タイプのICもあります。
 

DSPチューナー化のメリット


 アナログ放送の電波をわざわざデジタルに変換して信号処理するメリットは、

@急峻なIFBPFが構成できる
AS/N、歪率、セパレーションなどの基本特性が良くなる
Bデジタル信号処理特有の技術が使える。つまり、適応フィルタを用いてIF段でのマルチパス対策や、音声強調によりAMのノイズ低減など
Cばらつきや温度特性などが良くなる
などです。

 上記のうち最も大きなメリットは、急峻で理想的なIFBPFが構成できることだと思います。アナログチューナーでこのIFBPF特性を実現しようとすると、IC内のコンデンサが非常に多くなってしまい現実的には実現不可です(また、以前使われていたセラミックフィルタは、帯域が広くて固定幅ですし、ばらつきもあるため大きく劣ります)。

 Fig.3とFig.4に、IFBPFで決まる選択度特性の、DSPチューナーとアナログチューナーの比較グラフを示します。DSPチューナーは理想的な特性を示しています。



 DSPチューナー化しても関係ない項目は、感度や妨害特性(隣接妨害を除く)です。これらの項目は、アナログのRF段で決まるためDSPチューナー化しても関係ありません(なにか特別なデジタル信号処理方法がある場合は別ですが)。
 
 一方、デメリットは、ビートノイズが発生しやすいことです。DSP動作のクロックの高調波がRF段に回り込むことによって、受信周波数と、DSPクロックの高調波の周波数とが一致する時にビートが発生することがあります。特定の受信周波数で、感度付近の弱入力で発生します。
 このビート問題はかなり重要事項で、この問題のためにチューナー開発がうまくいかなくなってしまうこともあります。
 
 ビートノイズについては、カーラジオのビートノイズ対策 も参照してください。

 また、部品点数については、現状はDSPチューナーの方がアナログチューナーよりも部品点数が多くなっています。最近はアナログチューナーもシリコンチューナー化してきており、非常に部品点数が少なくなっているからです。

 参考にFig.5にDSPチューナーの回路例を、Fig.6に最近のアナログチューナーの回路例を示します(クリックで拡大)。

Fig.5 DSPチューナー回路例(STマイクロエレクトロニクス公表資料より)
Fig.6 アナログチューナー回路例(NXPセミコンダクター公表資料より)

DSPチューナーとアナログチューナー性能比較


 実際のDSPチューナー製品と、アナログチューナー製品の測定結果を、表1.にまとめました。

 DSPチューナーは、パイオニアのMVH-380とパナソニックの86120-47530の平均値です。
 アナログチューナーは、ケンウッドのU383MSとクラリオンのPS-3075J-BとアルパインのCDE-121Jの平均値です。

   表1.DSPチューナーとアナログチューナー性能比較
 項目  DSPチューナー  アナログチューナー 備考(DSPチューナーのメリット)
FM
実用感度 [dBf]
 7.75  9.6 RF段のアナログ部分で決まるため、関係ない 
FM
S/N [dB]
(30%変調)
69.1   62.4 良くなる 
FM
歪率 [%]
(100%変調)
0.057   0.44  非常に良くなる
FM
セパレーション [dB]

(30%変調)
44.75   36.5
(CDE-121j除く)
良くなる 
FM
AM抑圧 [dB]
(FM30%、AM80%変調)
60.45   56.1 良くなる 
FM
ImageRej [dB]
50以上   67 (良くなるはずだが)アナログチューナーでも十分な特性で差はわからない
FM
2信号選択度[dB](100khz30%変調)
59   16.7 非常に良くなる 
FM
IM妨害[dBμ](妨害=800K,1600K、100dBu入力時 S/N30dBとなる希望レベル)
32.5   39.8  RF段のアナログ部分で決まるため、関係ない 
  項目  DSPチューナー  アナログチューナー 備考(DSPチューナーのメリット)
AM
実用感度[dBμ]
(変調1Khz)
27   30.7 RF段のアナログ部分で決まるため、関係ない 
AM
S/N[dB]

(変調30%)
66.5   54.1 非常に良くなる 
AM
歪率 [%]
(変調80%)
 0.029 0.23  非常に良くなる 
AM
選択度[dB]

(9khz)
 60以上 32〜60以上   非常に良くなる
 AM
妨害特性[dB]
(希望=40dBμ、妨害=40Khz100dBμ時のS/N)
15   15.7 RF段のアナログ部分で決まるため、関係ない