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カーラジオFM入力回路(同調タイプ)2HEADLINE

2013/3/7

下図の回路について前回からの続きです。

Fig.1 カーラジオFMチューナーのRF部回路図(同調タイプ)

カーラジオFMのRF部


3.同調回路

 同調回路は、アンテナ入力部とLNA出力部の2ヶ所に設けられています。
バラクタダイオードに印加するDC電圧で容量値を変化させ、受信周波数に同調するようになっています。目安としての同調回路定数は、98Mhz(USbandセンター)受信時、L値は0.1uH、C値は27pです。


 FM受信機の同調回路設計でのポイントは、

 @   選択度をとること。

A   Qの高いコイルを使い感度悪化させないようにすること

B       感度偏差を小さくすること(トラッキングエラー除く)

C   トラッキングエラーをなくすこと

D   バラクタでIM悪化させないこと

などです。

@    の選択度については、

【参考】選択度の測定ですが、私の場合は、RFAGConレベルをプロットしています。RFAGConレベルの変化がそのまま選択度特性になり、(RFAGC回路のF特も含めての特性になりますが)ハイインピーダンスプローブを使ってのレベル測定よりも簡単に正確に測定できます。


 選択度をとるには、Qの高いコイルを使い、2段目の同調回路のQを高くするため、FET負荷のトランスを13に設定し、MIX入力Cを小さくして、共振インピーダンスを上げます(初段の同調回路は選択度UPさせようとするとロスが大きくなり、感度悪化します)。

 IF=10.7Mhzの場合は、イメージ成分の21.4hzをどれだけ減衰しているかに注意します。Fig.1のRF部回路図では、(USband時)初段の同調回路で15dB、次段の同調回路で25dB減衰の合計40dB減衰します。ただ、イメージ抑圧は50dB以上必要なためこのままでは不足で、IQMIX(イメージキャンセルMIX)付のICと組み合わせか、あるいはどちらか一方の同調回路にイメージトラップを追加するようにします。なお、JPNbandの場合は、周波数が低くかつロアーローカルで同じ21.4hzでも比としては大きく離れるため、Fig.1のRF部回路で55dB減衰できます。

A    Qの高いコイルを使い感度悪化させないようにするについては、

コイルのQ値(0.1μH、100hz)は、大雑把にみて下記のとおりです。

●7mm角コイル、空芯コイル:100

5mm角コイル:60

●巻き線チップコイル:35

●積層チップコイル:10

スペースやコストと感度との兼ね合いになります。現在は、5mm角コイルor巻き線チップが多く使われています。

B    の感度偏差を小さくするについて(トラッキングエラーは除く)は、

 低い受信周波数で感度悪化しないようよう注意します。低い受信周波数ではバラクタのC値が大きくなりQが低下し、同調回路でのロスが大きくなるため感度が悪化しやすくります。


【参考】並列共振回路(同調回路)のQは、Q=R√(C/L)ですので(同じ抵抗成分の下では)C値が大きくL値が小さい組み合わせほどQが高く狭い共振特性になります。一方、CそのもののQは、Q=1/2πfCrs、LそのもののQは、Q=(2πfL)/rsですので、大きなC値と小さなL値の時程、素子のQが低く損失が大きくなります。

結局、並列共振回路(同調回路)では、大きなC値、小さなL値の組み合わせになるほど、狭く、損失の大きい共振特性になります(接続する負荷抵抗値が同じ場合)。


 感度偏差の対策としては、同調回路のL値を大きくして、固定C値を小さくし、バラクタ印加電圧があまり下がらない範囲で使うようにします。通常、VCC8Vの場合のバラクタ印加電圧は、受信周波数の高い方のバンドエッジから低い方のバンドエッジまでで、6.5V〜1.0Vになるように設計しますが、下限の1.0Vを出来るだけ上げるようにします。

  ただ、USBandからJPNbandまで同一定数でカバーする場合は、どうしてもJPNの下限(76hz)付近のバラクタ印加電圧が低くなり、感度が悪化がおきやすくなります。これが問題となる場合は、JPNbandのみ固定C値を大きくし、バラクタ印加電圧を高くして対策します。

Cトラッキングエラーをなくすことについては、


トラッキングエラーとは、受信周波数が変わった時の同調回路のずれのことです。
 最近は、RF部の同調回路のバラクタに加えるDC電圧は、ICDAC出力から個別に電圧を印加するため、DAC出力電圧をきちんと設定しておけばトラッキングエラーの心配はなくなり、ずいぶん設計が楽になりました。ただ、温度特性の合わせ込みや、一つのDAC出力で、二つの同調回路を動かす場合はやはりトラッキングエラーが発生する可能性がありますので、同調回路のC,L値の合わせ込みが必要です。

【参考】以前は、バラクタに印加するDC電圧は、VCO(ローカルオシレーター)に加わるPLLからのDC電圧(チューニング電圧)を利用していました。VCO部1ヶと、RF信号部2ヶの合計3ヶの同調回路をを連動させて変化させるため、トラッキングエラー(ずれ)が発生しやすく、バラクタのばらつき、同調回路のL値、C値の設定に細かい注意が必要でした。


DバラクタでIM悪化させないことについては、

 2段目の同調回路のバラクタ部分はかなり大きな振幅の信号が加わりますので、バラクタが歪みIM特性悪化することがあります。

変化比の大きなバラクタや印加電圧の低いバラクタを使用する時は注意が必要です。

4.LNA


 ディスクリートのデュアルゲートMOSFETを用いています。NFは1.1dBパワーゲインは21dBの素子で、ドレイン電流はダイナミックレンジ確保のため20mAくらい流しています。

 また、pinDだけではRFAGCATT量が足りないため、ゲート2をATTに利用しています。ただし、ゲート2にて電流を減らしてGAINを小さくする方法は、同時にダイナミックレンジも小さくしてしまうため、pinDだけではATTが足りない分ゲート2で補うという使い方をしています。

 なお、最近は、LNAICに内蔵したり、(IC内の)MIXをハイゲインにして、ディスクリートのFETを使用しない場合が多くなっています。ディスクリートのFETを使用しない場合は感度が悪化しますので、対策として弱入力時の変調度が小さい時は、IFFILTERの帯域を狭くして感度UPを計っています。

 実際の実用感度測定値としては、

●ディスクリートのFETを使用する場合は、13dBμ

●使用しない場合は、57dBμ

●使用しないでIFFITER制御した場合は、13dBμ

くらいになります。

5.不平衡→平衡(MIX入力部)


 MIX入力が平衡タイプのため、同調回路の出力をトランスにより平衡タイプに変換してMIXに入力しています。平衡入力のメリットは、同相ノイズ除去です。つまり、感度UPや、バイアス経路などからの出力成分の戻りによる不安定さが減少します。

 なお、ダイナミックレンジについては、平衡でも不平衡でも変わりません。両入力端子間のレベルは同じだからです(ただし、平衡タイプは入力振幅が1/2になるためVCCが低いときなどDCバイアス設定に有利ということはあります)。

 MIX入力のCは小さめにし、このCと同調回路のLの一部で、インピーダンスを高→低に変換してMIXに入力しています。

【補足】外付けのLNA不要の仕様のICで、Fig.1の回路のような(ディスクリートのFET付の)回路を使う場合は、下図のようにMIX入力Cを4pFに小さくし、ICの両入力間に100Ω位の抵抗を設けてGAINを下げることで対応できます。この100Ωの抵抗値は、外付けのLNAを使わない時に比べてGAIN23dUPするように(シグナルメータ電圧を見ながら)設定します。感度と、離れた妨害特性をUPすることができます。この時GAINを高く設定しすぎると妨害特性が悪化します。ちなみに図1の回路のアンテナ入力からMIX入力までのパワーゲインは約15dBあります。
 ただし、この応用方法は、バラクタに印加する同調回路ADJ用のDC電圧出力が無いICでは使えません。


Fig.5 外付けLNA不要のICにFig.1の回路を使う場合



つづく