本文へスキップ

カーラジオのビートノイズ対策HEADLINE

            2012/4/8

 カーラジオの設計者が苦労する、ビートノイズ(ビート)対策について書いてみたいと思います。

 ビートノイズ対策は、カーラジオのIC設計者、セット設計者にとって厄介な問題です。本来はビートが出ないICを開発すべきですが、IC完成後にビートが出てしまった場合はアプリケーションで対策することになります。泥臭い検討が必要で、うまくいかない時は心身ともに消耗します。
 

1.ビートノイズについて

 カーラジオで問題となるビートノイズは、PLLやDSPやマイコン動作のためのクロックの高調波が、RFまたはIF信号ラインに回り込むことで発生します。
  
Fig.カーラジオのビートノイズ
カーラジオのビートノイズ つまり、左図のように受信信号に起因する周波数成分と、クリスタルOSCに起因する周波数成分とでビートが発生します。

 特に最近は、IF以降をデジタル処理するラジオ(チューナー)ICが増えてきたため、デジタルブロックのクロックの高調波がRFやIF段に回り込み、ビートノイズが発生することが多くなっています。

 チューナーICは、「ビートノイズが抑えられているかどうか」が重要なポイントになってきています。

デジタル処理のチューナーICの場合は、開発初期の段階から、デジタル部にもチューナー技術者が関与して、ビートノイズ対策を盛り込む必要があります。デジタル部はデジタル屋だけ、チューナー部はチューナー屋だけ、という形で開発を進めると、後でビートノイズ対策で苦労することになります。)


2.ビート発生の原因検討

 ビートノイズが発生した時、その原因箇所は、発生する入力レベルにより次のように推定できます。

@実用感度付近などの弱入力で発生するビートは、RF段またはIF前段への回り込み

A中入力で発生するビートは、IFリミッタアンプ段への回り込み

B強入力で発生するビートは、FM復調回路以降への回り込み、またはPLLが原因でVCOが振られる時

 更に、
C受信周波数に関係なく発生するビートは、IF段以降に回り込み

D特定の受信周波数のみに発生するビートはRF段に回り込み

 また、どういう周波数関係でビートが発生しているかは、
SG(標準信号発生機)の周波数を凾eずらしたとき、ビート周波数も同じ凾eだけずれるか、あるいはn倍凾eずれるか注意します。
 同じようにクリスタルOSCも外部注入し、凾eずらしたとき、ビート周波数がどう変わるか注意します。

 更に、VCOを外部注入してビートが無くなるかどうかもチェックします。

以上の検討を元に、
 チューナーのブロック図と、受信周波数、IF周波数、VCO周波数、クリスタル周波数、使用しているクロック周波数などから、どのブロックでどういう周波数関係でビートが発生しているかを探ります。


3.ビートノイズ対策

 参考として下記に、以前私が対策検討したビート内容について整理しました。

 【参考】
 今までに対策したビート。

 
@FM 、クリスタルOSCの高調波がRF段に回り込み、実用感度の入力付近でビート発生
 AFM/AM 、DSPチューナーでDSP用のクロックの高調波がRF段に回り込み実用感度の入力付近でビート発生
   
 BFM、PLLのリファレンス(位相比較器)の高調波がRF段やIF段に回り込み実感付近でビート発生
 CFM、 10.7Mリミッタアンプ(F特が伸びたために)VCOが回り込み10.7Mの高調波とVCO成分とで中入力時ビート発生
 DFM 、クリスタル1/2の10.25Mhzが、450Kクォドラーチャ掛算器に回り込み、450Kの高調波とで飽和S/N時ビート発生
 EFM 、PLLのクリスタル分周成分が制御ラインを介してクォドラーチャ掛算器に回り込み飽和S/N時ビート発生
 FFM 、10.7Mクォドラーチャ検波IC時、VCO成分がクォドラーチャ掛算器に回り込み107M受信時、10.7Mの11倍の高調波と、VCO成分とで飽和S/N時ビート発生 
 GAM 、VCOの1/n分周器の高調波成分が2ndMIXに回り込み、10.25MhzとでIF2と同じ450Khzが作られビート発生
 

 ビートはほとんどの場合、掛算器がからんで発生します。

掛算器は元々周波数差成分(ビート)を発生させる目的の回路ですし、スイッチング動作するため高調波が必ず発生するので余計なビートも発生しやすいのです。


 上記のうち、最も問題となるのは @、AのRF段へ回り込むことによって発生するビートです。実用感度付近のRFレベルが1μV付近と非常に小さいため、対策が難しくなります。IC内対策だけでは解決できず、アプリケーションでの対策も必要になる場合が多いです。

 BからGのビートについては、IC内部での対策がメインになります。
まず、ビート発生の個所と、どういう周波数関係なのかを突き止めます。

IC内での具体的な対策内容は

 問題のブロック間のGND、VCC、レギュレータのメタルパターンを分離してアイソレーションとったり、
 ブロック間の接続ラインにRCのフィルターを入れたり、クロックレベルを下げたりして対策します。


アプリケーションでの具体的な対策内容は

@基板のGNDはベタアースにする。ただしアナログGNDとデジタルGNDを分けて、接続するポイントを変えてみる

AICのVCC-GND間のパスコンをpin直に配置する。ただし、フロントエンド部のパスコンは、付けるとGNDが振られて逆にビート悪化する場合があるので注意する

BVCC,REGラインにインダクタやビーズを入れる

Cダイバー用切替ラインやRF同調用DACラインにノイズのっていないか注意する

などですが、実際は泥臭く、いろいろと試行錯誤して改善される方法を探ります。

 あと、アンテナ入力部にディスクリートのFETをLNAとして追加し、IC入力ポイントのインピーダンスを下げることにより、回り込むノイズレベルを相対的に下げるという方法もあります。

4.ビートノイズはどこまで許されるか

 実際にはビートノイズはどこまで許されるのでしょか。
基本的には、ビートが発生すのはNGということでビートナシが求められます。しかし、対策しても完全になくならない場合、ビート発生する受信周波数が1〜2ポイント程度であれば、ビートによる実用感度の悪化が2dBまでならOK、というのが私の感触です。

 2dB位でしたら、ビートが無い時でもUSバンドエッジの108.1MからJPNのバンドエッジの76Mの間でも感度偏差が元々ありますので(最近は広帯域RFのため感度偏差は無くなってきましたが)いいのではないか、というわけです。

 ただ、現実は2dBにも収まらないケースも結構あり、量産日程が決まっていてどうしようもない時は政治的判断でそのまま量産することになります。

 たとえば、下グラフは以前私が評価した国内カーステレオメーカーの製品ですが、感度が10dB以上悪化しているポイントが4か所もありました。

Fig.ビートノイズにより感度悪化しているカーステレオ(カーラジオ)例